第5回では、マニュアルの原稿を作成する段階で、込めるべき"思想"の重要性について述べさせていただきました。
(第5回 良いマニュアルはWHAT+WHY)
第6回では、マニュアルを使って実際にOJTをする育成担当者の教育に触れていきます。
育成担当者は教えるための教育を受けているのか?
マニュアルのような教材の開発が進められると同時に、一つ考えなければいけないことがあります。
OJTをするのは多くの場合、現場の若手社員や育成の役割を任命された社員なのですが、この育成担当者は教えるためのトレーニングを受けていないケースが非常に多いのです。
教える業務内容については、知識や経験を持ち合わせているのですが、管理職や人材育成部門の方を除いて、「人を育てる」「教える」という側面においては、見よう見まねであったり、自身の経験を頼りに行っているのです。ヒアリングをしてみると、本人達は「このやり方で合っているのか?」「こう聞かれたら、どう答えたら良いのか?」といった不安の声が出てきます。
マニュアルを使った人材育成を進めるのであれば、同時に、教える側の育成担当者に対しても何らかの教育支援を提供することが望ましいでしょう。それは育成や成長のバラつきを生じさせないという面でも重要なことです。
育成担当者への教育支援とは?
では一体、育成担当に何を教えれば良いのでしょうか。私は大きくは以下の3つだと考えています。
1.人材育成者としての心がまえ・役割認識
2.基本スキル
3.教え方
1.人材育成者としての心がまえ・役割認識
なぜOJTをして欲しいのか、それによって育成担当者にどんなメリットがあるのかを伝えます。そのうえでどんな考え方や振る舞いで、育てる相手に向き合って欲しいのかを伝えます。これがOJTを任された担当者の使命感やモチベーションの源となります。
2.基本スキル
OJTを行なう際の基本スキルとして、「ティーチング」「コーチング」「傾聴」といった基本のスキルを教えます。
専門知識を習得することが重要ではなく、「決まっていることを教えるスキル」「相手の考えを引き出すスキル」といった理解しやすい言葉で伝え、現場で発揮しやすいよう教えることが重要です。
3.教え方
やって見せる→解説する→やらせる→理解を確認するといった基本の流れとそのやり方を伝えます。ここが、自己流や見よう見まねの教え方に陥らないための大切な指針となります。またこの流れのなかでマニュアルをつかうことで、育成の効果を上げることができます。
これらを、どのように教えるかはその企業の体制によって様々です。研修の機会を設けることもあれば、育成担当者用のガイドブックや映像教材を作ることもあります。どんな方法であっても、教える側にも教育支援をすることは、教える側と組織、両方にとってメリットのあることです。
次回は、「マニュアル作りの現場から」として、教育要素の洗い出しの重要性に触れていきます。
筆者
マーケティング研究協会
中村 佳美
商社の事務職、営業コンサルティング会社の営業職を経て、2012年マーケティング研究協会入社。企画営業職として、クライアントの営業力強化、マーケティング強化を支援している。クライアントの支援を通じて学んだ人材育成ノウハウ、新人時代に受けた上司の優れたOJTの経験を活かし、営業販売部門のOJT・人材育成業務のマニュアル作成支援も行っている。