第7回では、マニュアル作りにおいて、教育要素を洗い出す工程でのインタビューの重要性について触れました。
(第7回マニュアル作りの現場から ~現場インタビューの重要性~)
最終回の第8回では、教材の多様化について触れていきたいと思います。
一昔前であれば、マニュアルと言えば紙媒体(冊子)でしたが、今は職種や働き方の多様化によりマニュアルの形も多様化しています。今回はいくつかの媒体を取り上げて、私なりに適性やメリット留意点を整理してみたいと思います。
1.映像マニュアル
今一番ホットなのは映像マニュアルでは無いでしょうか。 スマホやPC、タブレットが生活や仕事のパートナーになりつつある今、この便利なツールを活かす機会が増えてきました。また今後ますます浸透するであろう、テレワークにも馴染みやすいのがこの映像です。
【適正】
映像マニュアルに向き不向きがあるとは考えにくいのですが、特に映像マニュアルの特性を活かせるのは、「見える」「聞こえる」「動く」ことが、仕事を覚える上で重要な業務でしょう。例えば店舗での接客や売場づくり、ビジネスマナー、ビジネスコミュニケーション、機材動作を伴う業務などです。
また演出によって感情を揺さぶる効果があるため、企業理念やブランドコンセプトなど、マインドの醸成にも適していると思います。
【メリット】
学習する側の社員やスタッフが、自分の働き方に合わせ、都合の良い時間と場所で自己学習できる
【デメリット】
通信環境が整っていることが前提
2.マンガマニュアル
文字を中心としたマニュアルと映像マニュアルの間のポジションにいるのが、マンガではないでしょうか。社員やスタッフ全員個々に映像を見る通信環境を整えることが難しい場合は、紙芝居的に読めるマンガを取り入れるという手もあります。
【適正】
マンガにはストーリーと、登場人物たちの感情を描くという特性があります。それを活かすことを考えると、読み手のマインドを育てながら覚える業務に適していると考えられます。映像と同様、企業理念やブランドコンセプトの他、作業現場の安全を守るために必要な業務、クレーム対応、顧客との信頼関係構築などが考えられます。
【メリット】
ストーリーと感情表現により、文章よりも読み手の記憶に残りやすい
文字だけでは伝わりにくいマインドの教育がしやすい
【デメリット】
マンガを作るのは、専門知識とスキルが必要であり、社内で作るのは困難
3.パワーポイント/ワード等の冊子マニュアル
今回触れる3つの中で、一番作るハードルが低いのはビジネスマンが使い慣れたパワーポイントやワードによる冊子作成ではないでしょうか。
【適正】
冊子マニュアルも映像同様、業務の向き不向きは考えにくいでしょう。しいて言えば、文字情報や言葉を一緒に覚えるべき業務に最も適しているのではないでしょうか。例えば専門知識、データ入力・書類作成、言葉使い等です。
【メリット】
印刷する以外にPDFで持ち運べたり、メモを記入しやすい
元データの編集が容易で、業務内容の変化に応じて内容のアップデートがしやすい
【デメリット】
画像やイラストは入れられるが、動きや音を表現しにくい
マニュアルの媒体は、OJTを受ける側の働き方や職場環境をふまえて一番活用されやすい=成果につなげやすいものを選ぶことが重要です。また、どのようなアウトプットを目指して教育するのか、ということから逆算して「映像マニュアルと紙のワークシート」「マンガとロープレ」といった組み合わせも考えておくと、より使い勝手が良いツールになると思います。
全8回に渡った「OJT・人材育成マニュアル作成のススメ」はいかがでしたでしょうか。
書籍のように整った内容ではなかったと思いますが、お読みいただいた方、ありがとうございました。
筆者
マーケティング研究協会
中村 佳美
商社の事務職、営業コンサルティング会社の営業職を経て、2012年マーケティング研究協会入社。企画営業職として、クライアントの営業力強化、マーケティング強化を支援している。クライアントの支援を通じて学んだ人材育成ノウハウ、新人時代に受けた上司の優れたOJTの経験を活かし、営業販売部門のOJT・人材育成業務のマニュアル作成支援も行っている。