コラム

コロナがもたらす医薬品マーケティングへの影響 ~新型コロナウィルスの医薬品マーケティング活動への影響について~ 第2回

元外資系製薬企業 マーケティンググループマネージャー

末延 成彦

2020.09.17.Thu.

MR活動はEBM(Evidence Based Marketing)において不要なのでしょうか?


昨今のコロナウィルス禍によりMR活動が自粛されている中、ある外資系企業では日本全国の営業拠点を大幅に整理・縮小する計画を発表しました。これは、MR不要論の不吉な予兆となるのでしょうか?

答えは誰も分かりませんが、少なくとも私は「MRは必要な存在である」と信じたいです。


最近になって医薬品の市場価値(売り上げやシェアなど)は、その製品が持つ科学的なパワー(Hazard Ratio: HR)によってほぼ規定され、マーケティングなどコマーシャル部門の寄与は殆ど考慮しなくてよく、市場に参入する順序のほうが影響は大きく、むしろコンプライアンスの面からも余計なプロモーションは不要ではないか?使えるデータも限定され、新薬導入時の短い期間に最小限の暴露による認知度獲得さえしておけば良いのではないか?という発言を耳にする機会がありました。


筆者は、預言者ではないのでこうした空気や実際どうなるか?についての評価をしませんが、前回のコラムでも書いたように、MRの活動(それをリードするブランドプランも含めて)は、日本の医療の発展に寄与すべきものとして残って欲しいと願っています。
願うという動詞を用いた理由は、幾つかの条件(KSF)が必須と考えるからです。


まず第一に、MRの活動(ブランドプランも含む)は、科学的根拠を逸脱しないことが必須条件なことです。
疾患や治療領域によっては、根拠の精度を上げることの出来ない製品もあるかもしれませんが、その製品が持つ試験データに忠実な活動が絶対です。また、それを伝達する最前線のMRの高い倫理性と深い学術知識も必須の条件と考えます。


そしてもっとも重要な点は、これらの実現と実行を保証するブランドプランを策定できる優秀なブランドマネージャーの存在だと考えます。
ブランドプラン全体を通じて高い倫理性が担保され、さらには営業部門にどう動いてもらうかではなく、ブランド価値を高める目的に対して従来とは違う構成要素で成り立っていることで、MR活動不要論とは違うディレクションを業界に示すことができるのではないかと考えます。


最近のトレンドとしてメディカル部門の強化が図られてきた医薬品企業は、ここで改めてマーケティング機能の強化を真剣に考えてみて欲しいですね。さて、皆さんの所属する企業はどのように考えていますでしょうか?そして皆さん個人はどう考えていますか?

筆者

元外資系製薬企業 マーケティンググループマネージャー

末延 成彦

10年超のMR経験を経て、複数の外資・内資製薬企業のマーケティング部門にてジャンルの異なる疾患領域の製品マーケティング業務を担当。 プロダクトマネージャーやグループマネージャーとして新製品の発売や適応追加などを数多く経験。2018年11月より個人でマーケティングコンサルタントとして活動し、現在に至る。信条は、医薬品の価値最大化を通じた患者さんと医療の発展への貢献の追求。

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