今回は、組織全体で営業力の強化を推進している事例について、ご紹介をしていきます。
きっかけは「30歳未満世代の大量退職」
ある大手消費財メーカー様と数年にわたって組織全体で営業力を強化するご支援をしてまいりました。
そのメーカー様では、基本的にOJTに頼った人財育成が中心であり、その他の取り組みはほぼ実施してきていませんでした。つまり、OJTだけが頼みの綱だったのです。
ところが、入社10年未満の営業社員の退職が続き、OJTを担当する社員が入社5年くらいの若手の方になってきました。
新たにOJTを担当される方々の知識・スキルが、まだ望ましい水準に至っていない中でOJTを実施する状況に限界を感じ、
組織全体での営業力強化に着手をされました。
※大量退職の理由は様々でしたが、「OJTの負担が大きい」「自分も教えてもらっていないのに教えろって言われても」
「ここにいても自分が成長するイメージが持てない」などの声もあったようです。
目先を追いかけつつ、先々もデザインした
まず、このメーカー様では、喫緊の課題である今後OJTを担当してもらう入社5年くらい(いわゆる若手営業)の方に対して、営業としての"型"を教えることから始められました。
キックオフ時に、1年先には何を目指すかを検討すると同時に、3年先まで何を実現していくかという中期的な目的を定め、その実現に向けてのマイルストーンも明確に定義をしました。
下記がその提示の事例です。(※実際の表現とは補正をしております)
2年目以降は対社内、社外での活動を分けて実施したのが特徴的な事例です。
1年先:若手が、共通した知識・スキルを基に得意先に提案型の営業、提案後の検証も行うことができる
2年先:(対社外)習得した知識・スキルを実践を通じて進化させ、得意先から相談を持ちかけられる営業になる
(対社内)後輩に対して、経験をもとに実務知識・スキルを教えられるようになる
3年先:(対社外)カテゴリーの将来像について得意先と意見を交わし、上席者も巻き込んだ提案が出来るようになる
(対社内)後輩からの相談に対して適切な働きかけを実現しつつ、自分自身も社内のパイプを広げる
きっかけとなったこれまでOJTを担当していた世代の大量退職ということに対して、「新たな担当者がOJTを実践できるようになる」という短期的な目的だけではなく、その先についても定義をしたことで、何が「不足」、「充足」しているのかを振り分けながら、いつのタイミングで、何を実施するかという、全体でのゴールに向かって活動を進めることが出来ました。
派生する強化策も目的に沿った内容になった
例えば、2年目の際に、若手がつきっきりで新人にあたるのは難しい。若手を助けるためのツールを用意しようということでOJT担当者がカタチややり方は違うものの、新人に共通して教えていた内容について活動マニュアルを整備しました。
(例:月間、年間の業務スケジュールや売場の見方について 等)
また、強化プログラムが3年目になってくると、徐々にOJT担当者をマネジメントする上席者(マネジャー)にも提案営業の型についての理解が必要になり、マネジャーに向けても提案型営業についての再確認のプログラムを実施しつつ、これまでメンバーの自発的な成長に頼ってきていたことを修正すべく、
「コーチング型の育成マネジメントスキル」の習得も実施しました。
強化プログラムを開始してから、はじめのうちは、受講対象者の方、特に若手に対して現場のベテランから
「そんなことやってないで、店・本部に行け」「座っていないで、卸に顔を出してきたら?」というような声も出ていたと聞いていますが、2年目の途中くらいから、徐々に理解も広がり、組織としての雰囲気も変わってきました。
とりあえず、という考えで実施していては、結局「OJT担当の負担が大きい」ということにつながりかねず、元の木阿弥になってしまう危険もありました。しかし、先々を見すえての強化に取り組んできていたことから、本当に必要な支援策も検討、実施でき、組織全体での強化につながってきたのではないかと考えています。
担当者が変わっても、スピードを緩めない
補足になりますが、このメーカー様では、ここ5年の間に担当者の方が3人ご異動されています。
しかし、そのことがマイナスに働いたことは1回もありませんでした。
担当の方が変わられたからといって、一旦立ち止まって実践内容を見直すのではなく、強化プログラムを実践しながら検証をされていました。
事務局方が個人で推進するという考えではなく、会社全体で推進するという、チームでコトにあたっていただいていたからできたことではないかと考えています。
かなりかいつまんでのご紹介になりました。
さらに詳細についてご希望の方がいらっしゃいましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
さて、次回は本シリーズコラムの最終回として「営業サポート部門の強化」についてお伝えいたします。
筆者