マーケティング研究協会コンサルティングサービス部は、2023年2月7日にオンラインセミナー「案件数・取引額を劇的に伸ばす 既存顧客向け 新・営業メソッド」を開催致しました。
モノやサービスの差別化が困難で価格競争に陥りやすい生産財・産業財業界。
コモディティヘルから抜け出し、国内営業の基盤を強固にするにはどのような変革に取り組むべきか?
今回は基調講演として株式会社コーポレートウェルネスの稲葉氏をお迎えし、稲葉氏が大手生産財メーカー在籍時に構築した「R&Pセリングメソッド」と、そのメソッドを活用した営業改革についてお話いただきました。
当日は日本の製造業を代表する企業の、営業統括部門、営業企画部門、管理職の方々を中心に、多くのお客様にご参加いただきました。
-目次-
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1.オープニング
「生産財・産業財業界の営業課題」
マーケティング研究協会 コンサルティングサービス部
本セミナーの企画背景として、BtoB国内市場の現状と企業の営業組織の課題について共通認識をすべくお話させていただきました。
なかなか商談のきっかけが作れない営業
この数年、BtoB業界のビジネス環境には様々な変化がありました。
- 工場の稼働停止やサプライチェーンの乱れ、価格高騰等、顧客に積極的な提案をすることが困難な状況に
- 急速なデジタル化によって顧客の仕事の仕方や意思決定の仕方に変化
- 展示会や紹介訪問が主流だったBtoBマーケティングがデジタル化
- 働き方の変化により、営業担当の能力差がばらつく、若手営業の育成が進まない
総じて"なかなか商談のきっかけが作れない"という状況です。
顧客ニーズは複雑化・潜在化
一方で国内市場はポジティブな動きもあります。
- 止まっていた設備投資への積極投資
- サプライチェーン、カーボンニュートラル、DX、エネルギー分野への積極的な取り組みと国からの助成
- 新分野、新技術、事業領域を大きく転換していこうとする動き
など、顧客の社内では色々な動きが起きています。
しかし前段のように顧客接点が減っており、加えて顧客のニーズが複雑化・潜在化しているというのが、国内営業が直面している状態と言えます。
イマ求められる営業強化
このような中で国内営業が成果を出すには、社会・市場・顧客を見る解像度を上げる必要性があります。営業活動は更なる情報戦になっているのです。
弊社にエリア戦略強化のご相談が増えているのもそのような背景からと考えられます。
そしてエリア戦略を踏まえたうえで、代理店は量を活かした面の活動、メーカーは質を重視した点の活動を磨く必要があります
顧客との取引額を伸ばせる営業、伸ばせない営業の違いとは?
代理店であってもメーカーであっても、先行き不透明な環境の中で新しい顧客をつくる、新製品を拡販するなど、目先の新しいことに目が向きがちです。しかし数字を伸ばせる営業は既存顧客で安定的に取引額を伸ばす素地をつくったうえで、新しいことに取組んでいます。
既存顧客との取引を拡大することは、今改めて営業組織を強化するポイントと言えます。
2.基調講演
「案件数・取引額を劇的に伸ばす既存顧客向け 新・営業メソッド」
株式会社コーポレートウェルネス 代表取締役 稲葉 直彦 氏
稲葉氏は富士ゼロックス株式会社在席時代、全国数千名の営業担当者の提案力強化の企画と営業組織への展開の責任者に従事。その後のコンサルティング会社設立後の経験を元に、既存顧客との取引を劇的に伸ばすセールスメソッドを、公開可能な範囲で語っていただきました。
BtoBビジネスの宿命
いかに優れた製品やサービスを提供している企業でも、BtoBマーケティングの世界ではやがてコモディティヘルに陥ります。顧客がメーカー間の商品やサービスの差異を認識できず、同じような製品・サービスであれば安い方を選ぶことで、販売者は売れば売るほど儲からなくなる状態です。
この地獄から抜け出す方法は、営業をモノ売りから「顧客に価値を届ける人」に変革することです。
コピー機業界の場合
2000年頃のコピー機業界は、コピー機メーカー同士の価格競争に加え、オフィスにおける出力の座をプリンターに奪われていました。コピー機の営業は安易な大幅値引きによる新機種への代替提案によってコピー機を売り、利益を出せない状態だったのです。
当時、営業の提案力を改善することは経営課題となり、全国の営業担当者を調査した結果、売れる営業の行動特性として「既存のお客様との関係のつくり方」に、統計では見出せない特徴があることが分かりました。
売れる営業の行動特性
売れる営業は製品紹介をせず、契約内容の報告と振り返りを行い、お客様との対話を通して問題を見つけ解決策を提案しているというものでした。売れる営業にはこのような特徴があります。
- お客様を知ることに関心が高い
- 話題はお客様の役に立つこと
- 競合の参入もめったになく
- 値引きも少ない(相見積もりになりにくい)
- 活動に計画性がある
- 商談サイクルが短い
そして、このような営業は販売後もお客様との関係性が高いレベルで維持され、新たな取引(クロスセル)が起きやすくなっていたのです。
売れる営業がしていることを皆でする
この売れる営業に共通する行動特性をメソッド化し、すべての営業に水平展開するために構築したのが「R&P(レビュー&プレゼン)セールスメソッド」です。
R&Pレビュー&プレゼン=振り返って新しいことを提案する
誰でもできるシンプルなやり方にしました。
機械の稼働状況の推移、サポートサービス履歴などを1枚のレポートに纏める作成ツールを構築し、営業担当者に提供しました。そしてこのレポートを使ってお客様の業務にどのような変化が起きているのか、どのようなことにお困りなのか、対話の中から見つけ解決策を提案していくトレーニングを実施しました。
レポート自体は何の変哲もないのですが、これが絶大な効果を発揮します。
「稼働状況をご報告しに伺いたい」と言えば普段取れないアポが獲得でき、通常の訪問だと立ち話や玄関先で終わるケースが多い中、ほぼ100%座って話ができます。
そしてデータ(事実)の変化に着目した質問をすることで、お客様の色々な業務の変化を引き出すことができたのです。
営業変革のDX
当初、売れる営業もこのレポート1枚を作成するのに平均45分かかっており、限られたお客様にしか持って行けないことがネックになっていました。
そこで、簡単に3分程度で作ることができる作成ツールを本社マーケティング部門で作り、全営業担当者数千名のPCにインストールしてもらいました。これが、本社マーケティング部門の仕事の在り方にも好影響を及ぼします。
それまで、マーケティング部門が作成した販促ツールの活用は営業個々人の判断に委ねられ、どれだけ活用されているのか掴めませんでした。しかしこの作成ツールは営業担当者がR&Pレポートを作成すると、自動的に活用ログ(いつ、どの営業が、どの顧客に・・)が本社マーケティング部のサーバーに蓄積され、リアルタイムで様々な分析できるようになりました。
営業個人の営業ツールの使用状況が分かることで、営業組織毎に、営業スタイル変革の状況把握が可能となり、またこれらのデータ活用はやがて、案件獲得の結果管理から、案件創出のための需要喚起プロセスの管理も可能にしたのです。
R&Pによるバリューセリング実践事例
R&Pは様々な業界のBtoB営業で「顧客に価値を届ける人」(バリューセリング)を実践する手法として有効です。
・製紙会社・・取引状況のレビュー
・業務用機器商社・・製品の使用履歴、トラブル状況のレビュー
・OA機器商社・・過去の危機購入状況、セキュリティソフトの稼働状況
・通信業界・・携帯電話の見直し
最後に(まとめ)
コモディティ化した製品やサービスは、モノ(機能性能と価格を中心にした売り方からコト(お客様の課題解決)を中心とした売り方に変革することが必要です。コモディディ化したビジネスで必要なことは、受注のプロセス管理ではなく、むしろ、需要喚起のプロセス管理です。その一つの有効なアプローチが「顧客との関係性を変える」ことです。コモディティヘルに苦しむBtoB営業には、「顧客との関係性を変えるR&Pの実践」をお勧めしたいと思います。
3.営業診断のご案内
マーケティング研究協会 コンサルティングサービス部
最後に、弊社から営業診断のご支援をご提案させていただきました。
国内営業の基盤を強固にしたい、既存重要顧客との取引を更に伸ばしたい、価値を提案する営業へと変えていきたい、顧客側から求められるメーカー営業に変えたい、といった営業強化に取り組むにも、現状把握が第一歩となります。
既存顧客への営業のあるある
- 取引を伸ばせる余地があるのに、営業担当者が現状で満足している
- 営業担当者の既存客の拡大・深耕力に大きなバラつきがある
- 営業担当者が変わると取引が縮小することがある
- リプレイス対応やトラブル対応はできるが、大型案件に持ち込めない
提案機会をつくることが出来ていない - 自社商材・サービスの一部しか、顧客に認識されておらず、広がらない
- クロスセルが出来ていない
- フィールドサービスが持つ顧客情報を活かせていない
- IOTによって取得できるデータが営業に活かせていない
営業診断のご提案
マーケティング研究協会コンサルティングサービス部では、営業組織を「営業活動」「マネジメント」「営業支援」「情報活用」の視点でインタビュー調査し、上記のような、営業組織の問題発見から解決の方向性をレポートにまとめ、ご報告する営業診断をご提供しています。
最短の実施期間は2~3ヶ月です。
- 事前お打合せ(5時間)
- インタビュー調査(4時間)
- レポート作成&ご報告会(2時間)
今後の営業強化の施策を考えるにあたり、
・第三者の目で自社の営業組織や営業活動の問題点を指摘して欲しい
・R&Pセリングメソッドはウチの会社で活用できるのか受容性を確かめたい
といった目的に合わせて調査を設計します。
■お気軽にお問い合わせください■ 「営業診断」「R&Pセリングメソッド」について詳しく聞いてみたいという方は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。 |
筆者