6月に入り、これからお得意先様・卸店様と秋冬の商談を控えられている方も多くいらっしゃるかと思います。
ご承知の通り消費者の生活防衛意識は高まっており、今年の秋冬も小売業にとっては向かい風のビジネス環境であることは間違いなさそうです。
そのような中で迎える秋冬の商談になりますが、どのようなシナリオで新商品や棚割、販促施策の提案をしようか、すでにお考えはまとまっていますでしょうか?
今月のコラムでは提案構成(提案ストーリー)と資料作成(伝わりやすい提案書)のPOINTを解説しますので、提案書のご準備の参考にしていただければと思います。
昨今、提案書の重要度は非常に高まっていて、得意先別に提案書を作成することが求められています。
その要因はいくつかありますが、小売業の企業規模が大きくなったり、経営のガバナンスが重視されるようになったことで、意思決定が組織的に・合理的に行われるようになったことが挙げられます。
また、業際化が進んできたことで、自チェーンの店舗に来店いただく理由(=競合との差別化)を今まで以上に追求する必要が出てきたことも一因として挙げられます。
そのため、メーカーからの提案はなぜ取り組む必要があって、どういう成果につながるのかを、バイヤーだけではなく組織で意思決定するために、「自社のために考えられた提案書」が必要になっています。
マーケティング部門や営業支援部門が作成した「提案書のひな型」が用意されていることも多いかと思いますが、必ずしも個別の得意先に当てはまる内容ではありませんので、得意先向けにカスタマイズをして提案に臨むようにしましょう。
では提案書はどのような構成(要素と流れ)になっているとバイヤーにとって魅力的で納得感の高いものになるでしょうか?
ものすごく単純化をすると、
- こちらの提案を受け入れてもらう客観的な理由
- 具体的な解決策
- その解決策の期待成果
の一連が論理的に破綻の無いストーリーになっていることが望ましいと言えます。
もう少し具体的には、
- 状況の要約(市場や消費者の動向、得意先の売場や販売状況、売場でのお客様の買い方・選び方など)
- 問題提起(状況の要約で示した現状と得意先の方針・目標とのギャップ、その要因)
- 課題設定(解決していくための方向性を、購入頻度・1品単価・購入点数など売上の分解視点で示す)
- 解決策(自社商品、棚割の変更、メーカーや得意先が持っている販促手段を使った施策など)
- 実行プラン(得意先の売場に合わせた棚割、販促の具体的なスケージュール、期待成果・販売目標など)
となります。
これだけを見てもお分かりいただけるとおり、「得意先固有の要素」が多く含まれています。
ひな型をそのまま持って行って「他のチェーンにも同じ提案してるでしょ?」と言われないように、得意先固有の要素を組み込んで提案ストーリーを構成していきましょう。
一点、大切な留意点ですが、提案はメーカー都合にならないように気をつけましょう。例えば、問題提起が「うちの商品が売れてません」、課題設定が「うちの商品を強化しましょう」、目標が「これくらいの納品数(金額)でお願いします」ではメーカー都合の提案となってしまいます。
得意先の目線で、問題提起は得意先の売場・売り方とお客様の間で起きている望ましくない状況、課題設定はお客様の買い方にどのような変化をもたらすことで得意先の実績に良い影響を与えていくのか、期待成果は納品ベースではなく得意先が日々追いかけているPOSベースで語るようにしましょう。
次に、伝わりやすい(バイヤーにとってわかりやすい)提案書のつくり方についてです。
弊社で小売業様へ行ったアンケート調査で「メーカーの提案でイヤなこと」を伺ったところ、「提案書がわかりづらい」という回答が第3位にランクインしました。多くの提案書に目を通すバイヤーにとって「わかりやすい提案書」はとてもありがたいもので、他メーカーとの差別化につなげられるひとつの要素と言えます。
今回のコラムでは「1つの原則」と、「2つの超簡単にできる工夫」をご紹介します。
まず1つの原則ですが、「1ページに1つの言いたいこと」にすることです。
例えば、市場の推移を説明する資料で、カテゴリー全体とサブカテゴリー別のページを分ける、などです。
1ページに言いたいことを詰め込み過ぎると資料自体が見づらくなります。
特にデータ関係は表やグラフが小さくなりすぎて、注目してほしい変化などが伝わりづらくなってしまいます。
他にも、修正の際に細かいレイアウトを気にせずに直せたり、ページの抜き差し(商談時間に合わせて重要なページだけを抜粋して、残りは補足資料として後ろに付けておく、など)がしやすくなったりと、後々の作業を楽にすることができます。
全体のページ数は増えますが、バイヤーへの伝わりやすさ、修正・調整のしやすさというメリットが格段に上がりますので、「1ページに1つの言いたいこと」のシンプルな資料化を心がけましょう。
そして、超簡単にできる工夫のひとつめは「表紙を魅力的にする」です。
「24年秋冬 弊社新商品のご提案」
「○○カテゴリーの新しいお客様を獲得・育成する~弊社秋冬新商品のご提案~」
どちらが「お!詳しく話聞かせて!」となりそうでしょうか。
表紙はバイヤーが一番最初に目にするところです。
提案の概要をたった一筆加えるだけで大きく印象を変えることができますで、次回ご提案でぜひ取り入れてみてください。
超簡単にできる工夫のふたつめは「目次を作る」です。
こちらも作った提案の流れを箇条書きにするだけですので簡単に作成できると思います。
プレゼンの開始時、バイヤーはこれからどのような話をされるのかわからない状態です。最初に全体の流れをお伝えすることで提案を受ける準備が整い、内容が頭に入ってきやすくなります。
また、特に知りたいことはどこなのかを事前に把握できますので、資料をパラパラと先にめくってこちらの話を集中して聞いてもらえないということも避けられます。
長くなりましたが、提案ストーリーと伝わりやすい提案書のつくり方についてPOINTをお伝えして参りました。
実務的には担当得意先全てに個別の提案書を作ることは難しいと思いますが、特に重要な得意先についてはその企業様向けの提案書を作成いただき、秋冬商談の成功につなげていただければと思います。
【お役立ち追加情報】 提案の構成について過去のコラムでイラスト付きで解説しています。ぜひご覧ください。 秋冬商談の提案書作成にお役立てください。 |
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筆者