コラム

【トレードマーケティングTips シン・販促提案を考える】

シン・販促提案を考える
「生活者・小売業の変化とこれからのメーカーの販促提案」

株式会社マーケティング研究協会 取締役 トレードマーケティング部 部長

塚本 和之

2025.01.20.Mon.

2025年がスタートしました。
「変化が激しい世の中」と言われて久しいですが、小売業の売場や販促はどのように変化しているのでしょうか。
個人的には、料理好きな一生活者として、また業務の一環としてスーパーマーケットやドラッグストアには頻繁に足を運んでいる身としては肌感覚で変化を感じることは多いので、この機会に改めて整理をしてみようと思います。

売場や販促、何が変わった?

売場に関しては"定番補充型"で作業効率やオペレーションコストを重視されていることを強く感じるようになりました。大幅な入れ替えが必要となる棚替えを控えたり(もしくは、メーカーへの作業依頼が増えたり)、エンドの入れ替え頻度を減らしているような店舗も見受けられます。人手が必要となるような作業に関して、かなり敏感になっている様子が伺えますね。

販促に関して言うと、"リテールメディア"という言葉が業界を賑わせており、お客様が店内にいなくてもスマートフォン等に情報を届けられるような、新たな販促手段が出てきています。しかし、小売業・メーカーいずれも「うまく活用ができているのか?」と問われると、まだまだ"黎明期"という感じで、例えばアプリ販促で言うと、ただ値引きやポイントクーポンをアプリを使って情報伝達しているだけ、という感じに見えることも多いように思います。小売業も試行錯誤という段階ながら、"リテールメディア"という新たな事業として収益確保を目指す考えの企業も多く、なかなかメーカーと一蓮托生とはいかないようです。

"店頭実現率が下がる"メーカーのプロモーション提案

とは言え、メーカーの視点から「各企業のリテールメディアを活用する」と言っても"各小売業に合わせて販促内容を考えて提案する"ということはこれまでの小売業との関係性の中ではあまり取り組んできていないことが多く、なかなか壁が多いようにも見受けられます。

メーカーの営業担当者はマーケティング部門から発信される各ブランド戦略に基づき、各小売業ごとにどのように提案していくかを組み立て実行する、という流れで活動をしていると思います。この提案の中身というのは、基本的にマーケティング部門から出てくるプロモーションを全国一律で実施を落とし込み、可能な限り全国・全業態・全店舗で店頭実現を目指すという考え方に基づいている、というのが一般的です。

もちろん、各小売業に提案していく際に「その企業に合わせた適切なプレゼンテーション」は各自考えますが、プロモーションの仕方を考えて提案する、というケースは少ないものと思われます。

これからの小売業のニーズは"他社とは違う差別化された提案"

一方で、彼ら(小売業側)が欲しているのは「自社のためだけのプロモーション」であって、全国統一のプロモーションをありがたがって取り組んでいただけなくなった、という話はよく耳にします。皆様もこうした施策の店頭実現率が下がっていっている、ということは無いでしょうか。
メーカーの提案の"前年踏襲主義"もマイナスに作用しているようにも感じますね。ほとんどのメーカーが前年の実績に基づいて販促計画が組み立てられていることがほとんどだと思います。これも小売業への提案における弊害となっていて、この前年踏襲という考え方も変えていかないと、受け入れ性がどんどん低くなっていくことが考えられます。
とにかく、人手も少ないので売場変更や新たな販促物設置等を好まれなくなっているのと、他社と同じプロモーション展開をしても「競合他社との差別化にも繋がらない」という小売業の考えの現れのようにも感じます。

各小売業どのようなアプローチをしていくべきか

なぜそのような事態になっているのでしょうか?
それは、"マス・マーケティングの限界"という理由が大きいと捉えています。
マスマーケティングの限界というのは、生活者ニーズが多様化していて全国一律の平均値に基づく画一なマーケティング活動というのが、結果的に非効率になってしまっているのではないか?ということです。
小売業も競争が激化をしている中、差別化・競争優位というものが彼らのキーワードにもなっています。そうなると、どこにでも同じ提案というものは彼らの受け入れ性が低いということにもなります。
各エリアの生活者、またはその小売業に来店されるお客様、というのを起点に営業活動をして行かないと、実現率が下がってしまうのです。
当たり前の話ですが、その企業が出店されているエリアによって人口動態も違いますし、生活者のニーズも違います。競合の状況も、メーカーの社内リソースも違います。これらを踏まえて各企業・各エリアに合わせた戦略というのが必須になっていますが、未だメーカーは対応しきれていない、というのが現状の多くのケースのように感じます。

このような状況を踏まえて、営業部門では"キーアカウントマネジメント"と言われるような、各小売業の企業軸でのマーケティング活動と、各エリアの生活者に向けたエリアマーケティング活動をしながら、ブランド戦略と融合させることによって効果的・効率的な活動に結びつける、ということが重要になってきています。

改めて、これからの販促提案を考える

ここまでを簡単にまとめていきます。

  • 過去にはメーカー主導で提案していたものが成立していた
  • 今は小売業側の"差別化"というニーズが強くなってきている
  • メーカーは"前年踏襲主義"が強く、対応しきれていない
  • メーカーと小売業の共通言語はそのエリアの生活者に対するマーケティング活動

全国一律・全業態・全店舗に配荷というマーケティング活動は、今後はますます難易度が高くなっていくということが考えられます。これらに対応してくためには、各メーカーの組織体制の再構築や営業担当者の知識・スキルの向上が必要になります。

組織体制については、今後機会があればまたお話したいと思いますが、営業担当者に必要なスキルにについては、次回、株式会社リテールインサイトの倉林氏より、具体的な店頭や施策の変化を交えてお話いただく予定です。

お楽しみに!

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筆者

株式会社マーケティング研究協会 取締役 トレードマーケティング部 部長

塚本 和之

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